12インチシングルについては、「レコードの33回転と45回転」で説明しましたが、リミックスは一般的な音楽ファンには馴染みが薄いのかもしれません。
しかし、80年代から90年代にかけて大量に生産され、中古品が多く出回っているので、1枚当たり100円位からあり(安い!)、基本※45回転だから(早い!)音が良く、オリジナルよりいいヴァージョンがある(うまい!)時もあるので、買わない手はありません。
※33回転もあります。
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12インチシングルのリミックスの基本構成
具体的に12インチシングルを見て説明していきます。先ずは、マイケル・ジャクソンの「BLACK OR WHITE」の12インチシングルから。
1991年リリースのアルバム「DANGEROUS」からのシングルです。この12インチシングルには、オリジナル・ヴァージョンを含め、この曲しか収録されていません。
つまり、オリジナル・ヴァージョン以外は全て別ヴァージョン(リミックス)です。
ジャケットの裏に、この曲の収録ヴァージョン名が記載されています。見ずらいので、書き出してみました。
SIDE ONE
THE CLIVILLES & COLE HOUSE/CLUB MIX
THE CLIVILLES & COLE HOUSE/DUB MIX
SIDE TWO
HOUSE WITH GUITAR RADIO MIX
SINGLE VERSION
INSTRUMENTAL
TRIBAL BEATS
一つの曲にたくさんのヴァージョンがあるのは、それぞれ目的があるからです。
ざっくり言うと、SIDE ONEのCLUB MIXとDUB MIXはクラブでDJがプレイする為のヴァージョンで、SIDE TWOのRadio MixとSINGLE VERSION は文字通りラジオ局用と一般的なリスナーの為のもの、INSTRUMENTARLとTRIBAL BEATSはDJがミックスする為の音素材です。
この12インチシングルには収録がないですが、アカペラ・ヴァージョンも同じです。
CLUB MIXの曲の長さは、6分~10分が多く、その分、曲の展開に工夫がされていて、サウンドのつくりがオリジナル・ヴァージョンとはかなり違います。
BLACK OR WHITE 12インチシングルの聴きどころ
レコード1枚に同じ曲しか入ってないんじゃ、コスパ悪くない?と思いがちですが、そんな思いを一蹴する、いいヴァージョンがあるんです。
それが、THE CLIVILES&COLE HOUSE DUB MIXです。
このヴァージョンは、A面1曲目のHOUSE/CLUB MIXをよりビルド・アップしたもので、旨味成分が濃縮されたヴァージョンで中毒性があります。
遊び心一杯のサウンドとオリジナルにはない、キーボード・ソロが後半から炸裂し、このヴァージョンの方が頭から離れません。
オリジナル・ヴァージョンは(テディ・ライリーがプロデュース)ニュー・ジャック・スィング調のリズムにヘヴィーなギター・リフが絡む曲ですが、このミックスでは基本のビートはハウスでギターリフは無くなり、代わりにキーボード・ソロが挿入されています。
マイケルの歌もほとんどなく、随所で声ネタ的にパーカッシブに使われています。
リミックスをした人(リミキサー)について
この人達が、リミックスを担当した CLIVILLES & COLE 、通称C&Cです。
膨大な中古12インチシングルを選ぶ際、一つの目安になるのが、リミックスを行った人達です。
大抵、DJやプロデューサーが手掛ける事が多いです。
THE CLIVILLES & COLE HOUSE/CLUB MIXのように、名前が表記される事が多いので、すぐに分かります。(表記がない場合もあります)。
C&Cのリミックスは、アイデアや工夫の引き出しが多く、遊び心があり、聴いていて飽きないのです。
12インチシングでよく見るリミックスの達人を紹介
Tom Moulton トム・モウルトン
Francois Kevorkian フランシス・ケヴォーキアン
Arthur Baker アーサー・ベイカー
Latin Rascals ラテン・ラスカルズ
Shep Petibone シェップ・ペティボーン
Danny Krivit ダニー・クリヴィット
ほんの一部ですが、こう言った人達の名前を見かけたら、ぜひ買ってみて下さい。
お勧めの12インチシングル
①はジョディー・ワトリーの「フレンズ」に、ERIC B.&RAKIMのラップのパートが入るリミックスですが、まるで最初からそういう曲だったかのような自然な流れが見事です。
このヴァージョンの方がオリジナル・ヴァージョンより格段にいいです。
②はキャロン・ホウィラーの「リビン・イン・ザ・ライト」のBRIXTON BASS MIXがお勧めです。
オリジナル・ヴァージョンと曲の構成は変わらずにベースラインを強調し、全体的にスムーズなミックスです。次のミックスと繋がっているのも、面白いです。
③はUKのレゲエ・シンガー、カールトンの「ラブ・アンド・ペイン」のDrum and Bass MIXがお勧めです。
オリジナル・ヴァージョンはリズム・パートがほとんど無いのですが、それにドラムン・ベースのビートを被せた感じです。オーガニックなドラムン・ベースです。
1991年リリース。
④はリミックス云々より、アナログ盤がある奇跡(?)で選びました。
90年代を代表する一発屋、ジェレミー・ジョーダンの二発目の12インチシングルです。1993年リリースです。
まとめ
12インチシングは、主に80年代に数多く制作されました。
ロック系のアーティストも12インチシングルを出し、オリジナルとは違うヴァージョンが賛否を呼んだ事もありあましたが、時間の経過とともに再評価されています。
余りにも数が多いので、何から探したら分からない時は、名前を聴いたことのあるアーティストの12インチシングルから始めるのもいいでしょう。
中古レコード店では、12インチシングルのコーナーがある所もあります。
1991年は国内でレコード生産が終了し、CDにほぼ完全に移行する最終年なので、1989年頃~1991年はLP(アナログ盤)はほとんど中古ではみかけません。
アナログ盤の生産量が激減したからです。
アルバムはCDでリリースし(アナログ盤のアルバムはプロモーション用やごく少数の生産で存在)、あとはDJユース等で12インチシングルが、アナログ盤でリリースされていた時期だと思います。
なので、アルバムがアナログ盤で手に入らなくても12インチシングルにオリジナル・ヴァージョンが収録されている事が多いので、アナログで聴く事ができます。
③のカールトンや冒頭のマイケル・ジャクソンがそうです。(どちらも、オリジナル・ヴァージョンが収録)。これもまた12インチシングルの楽しみ方です。
12インチシングのリミックスは、後からまとめて、一枚のリミックス集と言う形でCDでリリースされる事が多いです。
なので、最初はそのようなCDを買って、その中から気に入った12インチシングを探すのもいいかもしれません。
下はマドンナのリミックス集ですが、これは、既に発売された12インチシングルを集めたものではなく、最初からリミックス・アルバムとして企画され制作されたものです。
凄いのは、リミックスの選曲と、それを担当するリミキサーの組み合わせをマドンナ自身が行い、そして実際に現場でリミックスに立ち会っていた、と言う事です。
ほぼプロデューサーですね。マドンナの完璧主義的な仕事ぶりが分かります。
リミキサーは、ジェリー・ビーン(マドンナの元恋人)、スティーブ・トンプソン、マイケル・バリピエロ、シェップ・ペティボーンなど。当時のリミキサーの達人が集合しています。
これは是非買って聴いて欲しいですね。
これから、スタートしてもいいかもしれません。
CDは中古でよく見かけます。アナログ盤もたまに見ますので、探してみて!うには、両方持ってます。
おわり!
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